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HCDとは?意味やポイントについて解説します。

「HCD」はユーザーを中心に考えてモノを設計する概念。皆さんは「ユーザー中心」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?具体的な方法や手順、注意点などがわからないという人も多いと思います。今回はHCDの意味と実用の上でのポイント、また、しばしば話題に上がる「UI」と「UX」との違いについても解説していきます。

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HCD=ユーザーを中心に考えた設計

 

 

HCDとは人間中心設計のこと

 

HCDというのは「Human Centered Design」の頭文字を取ったものであり、「人間中心設計」という意味です。

人間中心設計は「モノに合わせて設計するのではなく、モノを使う人間に合わせて設計する」、つまり「いかにユーザーが使いやすいモノを作るか」の視点を持つことを指します。

これまではモノの用途や生産コストなどを中心に考えていたところを、ユーザー側の目線に立って使いやすさや満足感等を検討するのがHCDの中核となる考え方なんです。

 

「人々が求めているもの」を反映させる

 

では具体的に「ユーザー側の目線に立つ」とはどういったことでしょうか?

端的に言えば「人々が求めているもの」を適切に把握することです。例え、どれほど耐久性に優れていて低コストのモノであっても、ユーザーが「使いにくい」と感じれば生産性も利用率も下がっていってしまいます。

ここにHCDの考え方を取り入れると「実際に利用しているユーザーの声を聞き、より扱いやすいようなデザインや素材を利用する」といった「人々が使いたいと思うような設計」にシフトする形になります。

 

 

UI・UXとの違い

 

 

HCDと混同されやすい概念が「UI」と「UX」です。ユーザーに関係する点では共通ですが、示す内容や範囲が異なるので注意が必要です。

 

UIはユーザーが扱う上で接するシステムの総称

 

UIは「User Interface」の略称で、ユーザーが直接触れることになるシステムを指す言葉です。いわばユーザーとモノを繋ぐ接点と表現できるでしょう。

あくまでシステムの呼称なので、UIという単語自体にユーザー側の主観や感じ方は含まれません。ただし「UIが使いやすい」「UIが見づらい」などユーザーの感想を語る際にしばしば使われる概念ではあります。

 

UXとは「ユーザーが何かを利用したときに得られる経験」を指す

 

一方、UXは「User Experience」、つまり「使用を通してユーザーが得られる体験や経験」に価値を見出しています。UIがシステムそのものを示すのに対し、こちらはユーザー側の主観的なものごとに焦点を当てています。そういった意味ではHCDに近い概念かもしれません。

しかしUXは「体験や経験」を主軸にしているために、HCDより言葉の範囲が狭い傾向があります。関係性としてはHCDの中にUXが含まれているというイメージです。

 

HCDを行う上での4つのポイント

 

 

ではどのようにHCDを実行していけばいいのでしょうか。人間中心設計推進機構が公開している資料によると、実行の一連の流れは以下の4段階のプロセスに区分されています。

(参考:https://www.ipa.go.jp/files/000052578.pdf)

 

①利用の状況の把握と明示

 

まずは実際に製品やサービスがどんな形で利用されているのかを知る必要があります。これはユーザー側のニーズと設計側の認識の差を極力なくす作業とも言い換えられます。

把握するための方法としては、匿名式のアンケートや利用率の調査、類似製品・サービスとの比較などが挙げられます。「明示」とあるように、曖昧なデータではなく客観的にも明らかなデータを取りましょう。

 

②ユーザーの要求事項の明示

 

次に、データにより明確化した利用の実態からユーザーが要求しているもの・望んでいないものを洗い出す作業です。

データから得たデータが正確であればあるほど、そしてデータ量が多ければ多いほど作業をスムーズに行うことができます。この段階では「具体的なユーザー像の設定」をするのも分析の助けとなるでしょう。

ここでも①と同様ユーザーへのヒアリングやアンケートが有効ですが、基本的には補足として使うようにしてください。メインは要求事項の明示です。要求をよりわかりやすい形に落とし込むことを第一に考えましょう。

ユーザー自身が気づいていないニーズが存在する可能性も十分に考えられます。①の作業時に録画や録音をしておくと見返して再確認することができるため安心です。

 

③ユーザー要求に適合した設計による解決策の作成

 

ユーザーの要求事項がわかったところで、具体的に設計をするフェイズに移行します。ユーザーの声を反映させていく形になるので、従来のものに足りなかった部分を解決するための設計を行います。

わかりやすいように凝ったデザインで差別化する、逆に余計な情報が入らないように簡略化する、UIを見直すなど、様々な方法を利用してよりユーザーのニーズを満たすものを設計していきます。

しかし、場合によっては両立できない要素もあるため、「どれを採用した方がよりストレスがないか/使いやすいか」を検討し、取捨選択をする必要もあるでしょう。

 

④要求事項に対する設計の評価

 

最後に③で設計したものの評価を行います。チェックリストの確認、要求事項を満たしているかの見直し、実用に向けたテスト等から設計を確認します。

設計に足りない部分が見つかった場合は、適宜前の作業に戻って再度検討をし直しましょう。戻る前に「どうすれば問題を解決できるか」をあらかじめ分析しておくと、再設計に余計な手間がかかりません。

評価を満たしたら、晴れて製品・サービスが生産、または公開となります。

 

まずはキャリアの相談をしてみる

 

 

HCDのメリット

 

 

利用する際にユーザーが感じるストレスを軽減

 

大きなメリットとしては、製品・サービスを利用する人たちのストレスを軽減できることがあります。上手に使えれば便利なものでも使い方がわかりにくかったり、手順が複雑だったりすると、ユーザー側としてはどうしてもいいイメージを持てません。

そのようなユーザーが抱えていたストレスを解消、より快適に製品やサービスが利用できるように設計することができれば利用率や満足度は飛躍的に向上していくでしょう。

 

ユーザーが効率的に目的を達成可能に

 

「使いやすいもの」はものごとを効率化するのに役立ちます。使い方がわからないものと使い方がわかるもの、どちらの方が作業効率がいいかは自明です。

何かを導入する際に、効率が上がるかどうかを重要視するユーザーはかなりの割合を占めます。HCDで作られたものは初めて利用するユーザーでも扱いやすいものが多いため、効率アップに繋がりやすいです。

場合によっては、これまで達成できなかった目標も達成できるようになるかもしれません。

 

より多くの人に利用してもらえる

 

上記の2点からわかるように、HCDはユーザー側にとって得られる恩恵が多いため、選択されやすいと言えるでしょう。つまり、HCD導入によって売上が上がる可能性も高まるのです。

また、普及すればするほど知名度も上がるため、他の製品やサービスの利用率も上がりやすくなります。つまり1つの製品やサービスにHCDを取り入れることで、設計者や企業のイメージアップにも繋がるということです。

 

 

HCDの課題

 

 

多様なニーズに応えようとするほど、解決策を提示しにくい

 

HCDの特性上、「どこまでユーザーのニーズを汲み取るか」「どの層を対象ユーザーとするか」によって解決策を考えなければなりません。

「1つの製品・サービスで全てのニーズに応える」のは不可能です。多様なニーズに対応しようとするほどに解決策の提示は困難となっていきます。

「できるだけ多くの人の役に立つように」という理想だけではなく、「この問題が障害になっている、こういうユーザーが使いやすいように」などの詳細かつイメージがしやすいペルソナを設定するように心がけてください。

 

設計側とユーザー側で「ニーズ」の認識に差が生じる

 

作る側と使う側では見えている世界が違います。たとえば、ユーザー側が設計側の想定していた使い方とは別の使い方をしているケースは多々あります。

同じように「ニーズ」についても認識に差が生じている場合も少なくありません。設計側が問題ないと思っていた部分がユーザーにとっては不便な部分になるかもしれないのです。

このような「認識の差」を埋めるために、ユーザーが直面している些細な違和感や不便などを設計側が丁寧なヒアリングで聞き出すことが大切になります。「ここは大丈夫だろう」と思わずに、一つ一つの要素を確認する気持ちでチェックしていきましょう。

 

技術や時代の変化によってニーズが変わりやすい

 

ニーズというのはそのときどんな環境に置かれているかで容易に変わりうるものです。2000年代にはいわゆる「ガラケー」型の携帯電話が主流でしたが、2010年代に入るとスマホが爆発的に普及しました。

2,3年前に「人間中心設計」として成り立っていたものが既に成り立たなくなっていることすらあり得ます。同じものを設計するとしても、様々な理由で視点をガラッと転換させることも必要になるかもしれません

技術、時代、社会の変化は必ず訪れるものです。だからこそ業界内外にアンテナを張って、常に最新情報を手に入れるようにしておくといいでしょう。

 

 

「誰が使うのか」、具体的なイメージが求められる

 

「人間中心」とはありますが、「全ての人間」を中心に考えて設計するのは無理があります。

HCDを実践する際には「誰が使うのか」「対象ユーザーが利用するにあたって、何が不便になりうるか」を念頭に置くことが重要です。

 

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この記事の監修者

ギークリーメディア編集部

主にIT・Web・ゲーム業界の転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればIT人材の流れ等、「IT業界に携わる転職・採用」の事情を提供していきます。

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