退職理由が「家庭の事情」でも良い?好印象な伝え方や例文を紹介
退職理由として、介護や結婚などの「家庭の事情」を理由にすることは問題ありませんが、円満退職の為にも伝え方を意識すると良いでしょう。今回は退職理由が「家庭の事情」の場合の上司や転職先への伝え方や、転職面接をスムーズに進める話し方を解説します。
目次
退職理由が「家庭の事情」でも良い?
退職理由で多いもののひとつである「家庭の事情」を退職理由として伝えることに、何ら問題はありません。
厚生労働省が調査した「仕事をやめた者の退職理由」によると、「結婚したから」「出産・育児のため」「家族の介護のため」「家族が転勤したから」などのいわゆる「家庭の事情」に該当する理由を挙げた人は、他の理由に比べて圧倒的に女性が多い結果となったことも分かっています。
会社としても女性が家庭の事情を退職理由に挙げることはめずらしいとは感じないでしょう。
家庭の事情による退職であれば待遇や職場環境への不満ではないので、強く引き止められることは少なく印象が悪くなる可能性も低いです。
しかし上司から退職理由を尋ねられたときに、その理由をそのまま伝えても本当に問題ないのでしょうか?
「家庭の事情」を退職理由とした場合の伝え方や注意点をご紹介します。
円満に退職するには「家庭の事情」を伝えても大丈夫!
家庭の事情に該当する事柄
「家庭の事情」というと非常に範囲が広く感じますが、具体的には次のような事柄です。
- ・結婚
- ・育児パートナーの転勤や転職
- ・親の介護
- ・家業を継ぐ
- ・病気
- ・子供の進学
「家庭」とは一般的に夫婦あるいは親子で生活を共にしている環境を指します。
つまり、単身者にとって「家庭の事情」は「実家の事情」ということになります。
例えば実家の両親に何かトラブルがあった場合は家庭の事情に該当するということです。
また、「家庭の事情」を言い換えると次のようになります。
- ・一身上の都合
- ・自己都合
- ・家事都合
- ・家庭の都合
- ・プライベートな事情
- ・私事
- ・私的な理由
納得をしてもらい気持ちよく退職するために
「家庭の事情」がどのような理由であれ本音で話せる内容ならば、しっかりと状況を説明して上司に納得してもらうことに越したことはありません。
退職後に違った形で会社や同僚たちと関わることがあるかもしれないということを考えると、あやふやな状況は避けたいところです。
誠実に理由を述べることは、これまでお世話になってきた会社への感謝の気持の表れにもなり、円満に退職するための第一歩となります。
言いたくないことまでは言わなくてもOK
ただし一方で、「家庭の事情」とは私的なことであるため、事細かに説明したくないという場合もあるでしょう。
介護が理由の場合は家族の病名、身内がトラブルに巻き込まれたなど公にしたくない事柄は秘めておいても問題はありません。
その場合は「プライベートなことなので、詳細をお伝えすることはできません」と正直に言いましょう。
決して嘘を付く必要はありません。
上司の納得は得られなかったとしても、伝えることができる精一杯のラインだという態度で伝えることで、理解は得られるでしょう。
事情を話すことで協力を得られる場合も
具体的な家庭の事情を伝えることで、会社からの理解を得て対策を考えてもらえる場合もあります。
転居が避けられないのであればフルリモートに切り替える、現在の勤務時間が確保できないのであれば、状況が落ち着くまで休職扱いにしてもらう等、働き続けるための対策です。
もし職場への不満や他に退職したい理由がなく家庭の事情のみなのであれば、一度詳しく話して相談してみると良いでしょう。
退職理由が「家庭の事情」でも納得される例文
引き止められることなくスムーズに円満退職することを一番に望んでいる方もいらっしゃるかと思います。
本章では納得してもらいやすい例文を紹介しますので、ご自身の立場に置き換えて参考にしてみてください。
まずは上司とじっくり話せる場を作ろう
退職の意思を伝える相手は、基本的には直属の上司です。
まずはアポイントを取って、1対1で話ができる場をつくりましょう。
「家庭の事情」が建前ではなく本音の退職理由の場合、どのように伝えるべきか、例文をご紹介します。
より相手の納得感が高くなるよう、ポイントをおさえてください。
引き継ぎ期間を考慮、感謝の意も伝える
(例1)
本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
大変申し訳ありませんが、2ヶ月後の◯月いっぱいで、退職したいと考えています。
これまで長い期間、未熟な私を成長させていただいた職場、お世話になった上司や同僚の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
退職理由ですが、◯年前に父が他界し、ひとり暮らしの母も高齢となり具合を悪くすることが多くなりました。
なので介護のために実家に戻ることにしました。この会社でまだまだやりたいことがあったのですが、やむを得ずこのような選択となりました。
引き継ぎについては、班長と相談してしっかりと行いますので、退職までの期間は変わらずご指導のほど、よろしくお願いいたします。
民法では、退職希望日の2週間前までに退職届を提出すれば有効であると規定されています。
ただし実際は、2週間では引き継ぎもままならないでしょうから、1〜2ヶ月前に申告するのがマナーです。
退職の意向と同時に、職場への感謝の気持ちはしっかりと伝えましょう。それが円満退職へもつながります。
誠実に、具体的に伝えることで退職までの期間もスムーズに
(例2)
実は、先日実家の父が倒れ、家業を担う者がおらず、急遽私が継ぐこととなりました。
つきましては、◯月いっぱいで退職をさせていただきます。
(例3)
パートナーの海外転勤が決まり、よく考えたのですが、家族全員で行くことに決めました。
それにともない、◯月いっぱいで退職させていただこうと考えております。
退職の理由は様々。例えば家族の介護の場合、その病名など事細かなことまで詳らかにする必要はありません。
可能な限り具体的に伝えることで退職時期を調整してもらえるなど、こちらの事情を慮った対応をしてもらえる可能性もあります。
建前の場合の例文は…?
(例4)
この度、家庭の事情でどうしても今の仕事を続けることができなくなりました。詳細はプライベートなことを含みますのでお伝えすることができません。
誠に勝手な話で申し訳ありませんが、何卒、ご理解いただけますようお願いいたします。
「家庭の事情」が建前の場合は具体的な理由は言わず、かといってありもしないことを上塗りしないように、端的に伝えることが重要です。
引き止めにあった場合の対処法
相手に納得してもらいやすいよう工夫して伝えても、引き止めの言葉があるかもしれません。
さまざまな条件提示があった場合、それで現職に改めて魅力を感じ働き続けたいと思うこともあるでしょう。
また、職場の状況によっては「本当は何か別の理由があるのでは?」と詮索されることもあります。
だからこそ、包み隠さず事情を伝えることが大事なのです。
引き止めの条件を出されたからといって退職の意思が固い場合は、「余計な迷惑をかけたくない」「責任を負わせたくない」と意思の強さを伝えます。
仮に建前であった場合は、やはり具体的な作り話にするのはやめましょう。
詮索された場合は「申し訳ありませんが、プライベートなので詳しくは話せません」と伝えるにとどめるのがよいでしょう。
転職面接で不利にならないようにするには?
退職とセットになるのが転職活動です。
転職面接の際にも、前職をなぜ辞めることになったのか、退職理由を必ず質問されます。これまで述べてきたように、ひとくちに「家庭の事情」といっても、具体的な理由は様々です。
実情をどこまで話して良いものか、話すことで不利にならないか迷う方も多いでしょう。
しかし、採用後のことを考えて事実を伝える必要があります。
では面接どのように伝えればよいのか、普段からカウンセリングを行っている転職エージェントだからこそ重要視しているポイントを解説します。
実情を知ってもらうことが大切
前職の退職理由が「家庭の事情」であることが事実の場合、基本的には隠すことなくすべて話すべきです。
介護にしろ育児にしろ、その現状を踏まえた上で受け入れてもらわないと、もし採用となっても思うように働けないということになります。
また、雇い主側にとってもこんなはずじゃなかったのにと、お互いに不幸を招く結果になるでしょう。
まずはスキルや意欲を示す
(例)
前職では、インテリアのデザインを行っていました。
私のデザインした椅子が年間売上でトップを獲得したこともあり、誇りとやりがいを持って取り組んでいました。
しかし、ひとり暮らしの母が病気がちになり、私が地元に戻って介護をするということでやむを得ず退職いたしました。
実家から通える再就職先を探していたところ、業界でも注目のインテリアメーカーである御社の募集を目にし、応募いたしました。
働き方を個人の裁量で決められるという御社の制度も、介護と両立させたい私の希望にかなうものでした。
私のこれまでの経験はきっと御社に貢献できるはずですし、私自身さらなるスキルアップもできると考え、入社を志望しました。
ポイントは伝える順番です。
家庭の事情について話してしまうと、採用する側にとっても「この人を採用しても、働けないんじゃないか」と思われてしまいます。
自身のスキル・実績・仕事に取り組みたいという想いを伝え、前職を退職した理由を述べたほうが、聞き入れてもらいやすいのです。
自己分析からキャリアプラン作成まで
役立つワークシート
こんな方におすすめ
- キャリアプランを見つけたい
- キャリアの方向性を再確認して仕事のモチベーションを上げたい
- 能力や興味に合った新しいキャリアの方向性を見つけたい
こちら側の条件をしっかりと伝える
企業側は、働くに際し、どれほどの制約があるのかを知りたいので、家庭の事情について詳しく聞かれるかもしれません。
「時短勤務が良い」「◯曜日と◯曜日は残業ができない」など、家庭の事情によって生じる条件はしっかりと伝えて、お互いに共有しましょう。
企業側にとって働く際の条件はたしかに重要ですが、今後変わる可能性があります。
最も重視するのはあくまでスキルや経験、人柄だと考えましょう。
建前として「家庭の事情」を嘘でも伝えていい?
会社の待遇が気に入らないけど理由をそのまま言って辞めるのはちょっと、という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう時の建前としての家庭の事情を解説していきます。
不満を伝えトラブルにならないように
「家庭の事情」という退職理由は、建前の理由として使われる場合も多いです。
キャリアアップや夢の実現のためなど、前向きな退職理由であれば建前の理由を述べる必要はないでしょう。
しかし、給与や福利厚生など待遇面への不満・人間関係への不満・仕事にやりがいを感じない・将来性を感じない等、仕事や職場環境が満足できないことが退職理由の場合もあります。
会社側にネガティブな内容を話すことでトラブルになったり、退職するまで気まずい雰囲気になることを避けたいと誰もが考えます。
信頼できる上司であれば本音をぶつけられるかもしれませんが、そもそもそのような上司に恵まれていれば、退職を考えていないでしょう。
建前にする目的は“円満退職”だという意識を
先に述べたように、「家庭の事情」はプライベートなことなので、具体的な理由まで詮索されることは少ないでしょう。
そういった点から、建前の理由として便利に使うことができるのです。
その際もあくまで目的は円満退職なので、下手に嘘を重ねたり、ありもしない状況を空想で作り上げることは避けましょう。
かならず事実との齟齬が出ますし、SNS等でばれてしまう可能性があります。プライベートなことなので詳細は話せないということを伝えるに留めることがポイントです。
嘘はできるだけ避けて、しっかりと本音で話す。話せない理由であれば、建前として「家庭の事情」を使うことは構いません。
しかし、イメージを損なうような言動をとらないよう、伝えるべき内容は最低限におさえましょう。
確実に退職したいなら
主に会社が関わることのできない個人的な理由の場合だと、確実に退職できるとされています。
例えば出産を機に家庭に入る場合です。
「仕事と両立したいと考えたが、家庭に専念せざるを得ない状況になってしまったため」と伝えるとよいでしょう。
次に、引っ越しを余儀なくされる場合です。
パートナーの転勤に着いていく、家業を継ぐために地元に帰る、高齢の両親が要介護になったなどが該当します。
嘘はいけませんが、このような事情がある場合は仕方ないと判断するしかないため、該当する場合は正直に伝えた方が周囲の理解や協力を得やすいです。
転職面接で建前の「家庭の事情」は意味がない
転職面接でわざわざマイナスイメージを伝える必要はありません。
面接で答えるべき例文を解説しますので参考にしていただけますと幸いです。
”後ろ向き”なイメージを回避したい
「家庭の事情」を建前として前職を退職した場合、転職面接でどのように伝えればよいのでしょうか。
円満退職を目的とした建前だったので、転職面接で「家庭の事情」を持ち出してもあまり意味がありません。
むしろ、具体的にどんな事情なのかを聞かれ、答えに窮してしまうでしょう。
かといって、もし本当の理由が待遇や職場環境への不満であった場合、それをそのまま伝えてしまうと“後ろ向き”なイメージを与えてしまいます。
ここでは「家庭の事情」から少し離れますが、前職で不満があった場合の転職面接時の例文をご紹介します。
給与の低さが退職理由の場合の例文
(例1)
前職では、担当エリアの営業でトップの成績を上げていました。
仕事へのやりがいは感じていたのですが、成果がそのまま評価につながる企業風土ではなく、給与に反映されませんした。
そこで、さらに自分をステップアップさせるためにも、成果が公平に評価される社風の御社でチャレンジしたいと考えました。
人間関係が退職理由の場合の例文
(例2)
前職の職場は担当ごとの裁量に任せる方針で社員同士の情報共有や連携が少なく、横のつながりを持って仕事をする場面がありませんでした。
周囲と協力しながらプロジェクト進めたほうが仕事ができるという思いが募り、チームでの仕事を重視する会社への転職を決意しました。
部署はもちろんグループ間をまたいだプロジェクトを成功させておられる実績を目にし、ぜひその一員として働きたいと入社を志望しました。
本音を“前向き”に変換して伝える
「給与が低い」→「成果を公平に評価してもらいたい」
「同僚との人間関係が悪い」→「周囲と協力関係を持てる職場で働きたい」
「勤務時間や福利厚生に不満」→「余暇時間をスキルアップや自己成長の時間に当て、会社に還元したい」
このようにネガティブな退職理由をポジティブに変換することで、嘘をつかずに自信を持って面接に臨むことができ、採用担当者に好印象を与えることでしょう。
そもそも退職意思を正しく認識できているか
建前を使う方の中には、現在勤めている先に対してとにかくマイナスイメージが強くなってしまっている場合が多くあります。
その中でも、何が大きな要因であるかを自身が間違って認識してしまっているケースや、そもそも認識できていないという方もいらっしゃます。
その状況であると退職理由と実状がうまく結びつかず、転職活動を上手く進めることができません。まずはその要因となっているものを特定する必要があります。
相談するところから始める
自分自身で退職意思の大きな要因を認識できていない方は、他人へ相談してまずは明確にしましょう。
友人や家族に話すのももちろん良いとは思いますが、確実に大きな要因を特定できるとは限りません。なぜなら、働く人それぞれの考えやその人の身をおいている環境で理解度や解釈が変わってくるためです。
そういったときこそ、キャリアカウンセリングを受けることをおすすめします。弊社のような転職エージェントはキャリアの相談ベースから承っております。
実際にカウンセリングに来る方々で、カウンセリング前とその後で転職の要因と考えていたことが大きく異るケースは多くあります。
転職を前提としているならなおさら転職エージェントへ相談することを検討しましょう。どのように転職活動を進めていくかまでのサポートやその先の選考フォローも可能です。
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円満退職につなげるため、退職理由は上手に伝える
現在の勤め先を辞めようとお考えの方は、退職の理由をどのように上司に伝えるべきか悩んでいるのではないでしょうか。
退職の意志を伝えると、退職理由を必ずたずねられます。
会社としては貴重な人材を失うことになると同時に、採用活動も視野に入れなければなりません。
また今後は人材が離れていかないように、退職理由を参考にして職場改善などに役立てたいと考えます。
雇用されている側としては退職希望を伝えてから退職までの間、退職後も良い関係を継続したいという思いがあるでしょう。
そう考えると、上手に退職理由を伝えて、円満退職につなげることが望ましいのです。
退職届の書き方
退職届には、詳しく理由を書ける場合は理由を書き、建前の場合は「家庭の事情により」としたうえで、「勝手ではありますが退職いたしたく存じます」と添えると良いでしょう。
またこの場合、退職自由は「自己都合」に該当するため、「一身上の都合」という文言を用いれば詳細を伝える義務はありません。
ただし先述の通り、あくまで円満退職を目的とするのであれば、家庭の事情とし概要だけでも伝えておいた方が不信感を持たれずスムーズに受け取ってもらえるはずです。
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「家庭の事情」をうまく伝えて、より良い人生の節目に
- 家庭の事情で退職する場合は、話せる範囲で正直に理由を伝えて問題ない
- 家庭の事情で前職を退職した場合、転職活動の際には理由を正直に伝えるべき
- 家庭の事情により働くことができる条件がある場合は、その点も面接で伝えておく必要がある
- 家庭の事情を不満を隠す建前として退職した場合、転職活動の際にはポジティブに言いかえて伝えるとよい
本音でも建前でも、「家庭の事情」は非常に便利に使える退職理由です。
退職する会社と円満を保つこと、転職先へは事実を述べて採用後により働きやすい状況をつくること。
それらを意識して退職理由を伝えれば、退職・転職という人生の節目をより良きものにできるはずです。
IT・Web・ゲーム業界の転職に強い転職エージェントのGeekly(ギークリー)では、転職に伴いスムーズに退職をするためのアドバイスやサポートも行っております。
転職でライフスタイルが変化する方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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