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不動産テックの市場規模と展望を解説!成長率から見る市場の実態は?

不動産テックはX-Techサービスの1つですが、まだまだ認知度は低い状態が続いている分野でもあります。従来の商習慣を変えずにきた不動産業界では、不動産テックの浸透は難しいと言われてきました。しかしコロナ禍にあってその姿勢に変化が求められ始めています。その中で注目を集めている不動産テックの実態や展望を解説します。

不動産テックとは

 

 

まずは不動産テックとはどのようなものなのか解説します。

 

不動産×テクノロジー

 

不動産テックとは「不動産」「Technology(技術)」をかけ合わせた造語です。欧米などでは「Prop Tech」「ReTech:Real Estate Tech」などとも呼ばれています。

不動産業界で取り組む企業が徐々に増えてきており、今後の成長が期待できるサービスです。

 

不動産テックのサービスはかなり多岐にわたっています。

すでに開始されているのはVRを利用したバーチャル内覧システムやAI(人工知能)を利用した物件価格の可視化・査定などのサービスです。

インターネットを駆使した顧客マッチングや、WeWorkなどのシェアオフィスの認知度も広がりつつあります。

 

業界の課題解決の糸口

 

不動産業界ではITを活用することで業界の課題や従来の商習慣を変えようとする傾向が高まっています。

特に2020年からのコロナ禍では、不動産業界は特に苦戦を強いられた業界の1つとなりました。

対面での取引がメインだった不動産業界は、これまでとは違った顧客とのやり取りも必要に迫られています。

 

さらに少子高齢化人口の都市圏集中などへ業界としてどのように対応していくかという将来への大きな課題も抱えているのです。

それらを解決する糸口として不動産テックが注目を集めはじめています。

 

業界全体の浸透率は低い

 

IT技術を取り入れたテックサービスは多くの業界で導入されているものです。

金融のフィンテックもその1つであり、これ以外にも医療やヘルスケアなどの分野でも広がりをみせています。

その中で不動産テックの知名度はまだ高いとはいえません。

 

2020年に発表されたNTTデータ経営研究所の調査によると不動産テックの認知度は3.9%ほどとかなり低いことが分かります。これにより市場規模が大きいにも拘わらず未だ不動産テックが浸透していないという現状が見て取れるでしょう。

そして不動産テックを知っている人の所属企業のうち実際に取り組んでいる企業43.0%となっています。

加えて同調査によると規模が大きい(従業員数300人以上、資本金3億円以上)企業は不動産テックに着手しています。

 

これらの数字・傾向から大手企業はこれから不動産テックの活用が浸透していくと予想できるでしょう。

 

カオスマップから見る不動産テックのサービス例

 

  1. VR・AR…物件の疑似内覧や家具配置シミュレーションサービス
  2. 物件情報メディア…住宅の情報だけでなく、関連知識を提供するWEBサイトなども
  3. マッチング…所有者と利用者だけでなく、リフォーム業者、税理士、不動産業界で働きたい人もつなぐ
  4. シェアリング…不動産や空きスペースのシェアやマッチングの場を提供
  5. IoT…不動産のチェックを行うカメラやセンサー、スマートロックによる入退室管理システムなど
  6. ローン・保証…シミュレーション機能で、利用者の住宅ローン選びをサポート
  7. 価格可視化・査定…不動産の物件価格を査定・公表するサービスや、複数社への一斉依頼など
  8. リフォーム・リノベーション…情報提供やリフォーム業者とユーザーのマッチングサービスなど
  9. ブロックチェーン…セキュリティの強化
  10. クラウドファンディング…不動産投資の活性化
  11. 管理・仲介業務支援…顧客情報管理や運営支援ツールなど

 

 

不動産業界の実態

 

 

経済的な影響力や今後の成長の可能性も高い不動産業ですが数十年前からほとんど業務形態に変化が見られません。

不動産業界の実態を解説します。

 

日本の不動産業界はアナログ主義

 

不動産業界では紙の書類を郵送したり電話やFAXでやり取りをしたりというアナログな作業で常習化されてきました。

例えば個人の引っ越しなら不動産業者が宅地建物取引主任者の資格を持つ者を連れてきます。

読み上げられる説明を聞き、何種類もの書類を確認し、署名押印を繰り返すことになるのが従来の手続きです。

こうした手続きが常習化されていたため、不動産テックにおいては海外に比べると乗り遅れた感があったのは否めません。

 

オフラインで十分に対応できていた

 

書類作成などの業務をテクノロジーによって効率化できれば大きな利益を見込める可能性は高いですが、不動産業界のデジタル化は進まずにきました。

不動産という規模の大きなものを扱うため、顧客との信頼関係が重視される傾向にあります。

また、物件や土地は売買・賃貸に拘わらず実際に物件を見た上で検討する人がほとんどなので、オフラインでしかできないことが多くあるためにデジタル化が進んでいませんでした。

 

 

直近不動産業の動向

 

 

不動産テックはまだまだ浸透していませんが、そもそも不動産業界全体の成長率はどうなっているのでしょうか。

不動産業全体の市場規模と成長率動向をみてみましょう。

 

現状市場規模と成長率

 

財務省の「年次別法人企業統計調査」によると、令和4年度の不動産業界全体での売上高は41兆6,245億円でした。

四半期ごとの推移を見ると、直近の売上高はおおむね増加傾向にあります。

しかし2017年時点での市場規模は43兆4,335億円で、2018年は46兆5,363億円と続いていたオリンピック需要がいったん落ち着いた状態だとも言えるでしょう。

2020年以降は、コロナ禍の影響を鑑みたとしても増加率の高さは堅調でした。

 

不動産業界の2023年問題とは?

 

「日本人口の減少に比例して不動産の需要も落ちるのでは」という懸念は2023年問題と呼ばれています。

2023年以降は世帯数が減少すると予想されており、それに伴い住宅需要が減少することで不動産価値も下がるのではと考えられているのです。

また、テレワークの浸透はオフィスビルの供給過多を招くという見方もあります。

実際は、東京駅周辺や、虎ノ門ヒルズ駅や高輪ゲートウェイ駅など新駅が開業して間もないエリアを中心に、東京都内では2023年開業のオフィスビルが相次いで予定されるという結果となりました。

これは、2020年以来3年ぶりの大量供給の年とも言われるほどです。

それでもオフィス需要が減少する懸念は続いており、需給緩和が急激に進めば不動産業界全体を悪化させる要因となる可能性があります。

特にオフィス需要の大きな割合を占める情報通信業で、オフィスワークやハイブリッドワークが広まっている点を注視する必要がありそうです。

 

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日本の不動産業界を変えた不動産テック

 

 

これまで覆せない商習慣だったにもかかわらず、コロナ禍の影響で業界の姿勢が一変しました。

どのような変化が起こったのかを解説します。

 

SNSの活用

 

ウェブ上で不動産情報を提供したり仲介業務を支援したりすることは以前から行われてきました。

それがより活発になりSNSの活用も見直されています。

SNSは売り手側と買い手側が直接つながることができるツールです。

コミュニケーションがとりやすいという利点も大きいでしょう。

 

広がるVR内覧

 

さらにVRで物件を疑似体験できれば顧客はよりリアルに物件を感じることができ、それにより消費意欲が高まることが期待されます。

すでにナーブ社の「VR内見」といったサービスも開始されており、物件の内覧の仕方もこれからは大きく変わるでしょう。

これらは種々の不動産取引にとってとても有力なツールになることが期待されているものです。

今後は不動産テックによって不動産ポータルサイトが今以上に充実し、ユーザーの利便性がより高まると予想されます。

 

不動産テックが解決した課題

 

コロナで浮き彫りになった不動産業界の課題に対し、不動産テックは次のような解決策を見出しています。

 

情報の一元管理

不動産テックの導入により、不動産情報をひとつのデータベースに集約できるようになります。

これまで、取引履歴や管理状態、リフォームの履歴などがデータベース化されていなかったことで、中古物件市場には多くの障害がありました。その結果、全国の空き家の増加が社会問題にまでなったのです。

これは情報が属人化しやすい不動産業界の特色も影響していたと考えることができるでしょう。

データベースが整備されれば、売り手と買い手双方で情報の透明化が期待できます。

 

生産性の向上

不動産業界は、物件の管理や契約書など、紙ベースが浸透していました。書類の作成管理や不動産の煩雑な手続きには多くの時間と手間を要します。

また実際に店舗や物件に足を運ぶ工数は必須とされていたため、内見を繰り返す買い手・借り手側も売り手側も双方共に多くの工数を必要としていました。

不動産テックはこの課題に対しても大きな効果を発揮しています。書類管理にとられていた業務時間の短縮化や工数の削減は、生産性向上に大きく寄与しているのです。

 

 

不動産テック事例

 

 

不動産テックとしての伸びしろはまだまだ十分にあります。

しかし業界としてテクノロジーを活用しきることができていないというのが実態です。

そんな中でも上手にITを取り込んでビジネス環境を変化させることに成功した企業もあります。その例をご紹介します。

 

Houzzのマッチングサービス

 

Houzzは2009年にアメリカで誕生し2015年に日本に進出した、建築業界なども取り込んでいる企業です。

Houzz設立のきっかけはCEOが個人的にリフォームを依頼する際に好みの業者を見つけられなかったことでした。

そのため当初は個人宅のリフォームなどを目的にできたサイトとしてスタートしています。

ITを通じて依頼者と施工業者という人と人をつなぎ、コミュニケーションやネットワークを構築してきました。

サイトが拡大するにつれてデザイナー・建築家・個人宅向け建設業者などのデータベースとしての役割を担うようになりました。

サイト上の投稿をユーザーは「キッチン」や「リビング」などのカテゴリ別に検索し、気に入った写真を保存することができます。

業者を検索し、そのプロジェクト実績を参照したり問合わせすることも可能です。業種は以下の3つに分けられています。

 

・建築士&建築デザイナー
・インテリアデザイナー
・キッチン&バスルームデザイナー

 

札幌や地方都市にも登録業者が多いためこの数年での急成長していることが分かります。

今後も成長・拡大が予想される企業の1つです。

 

シェアオフィス人気を牽引するWeWork

 

シェアオフィス事業を手がける企業の中で何かと話題に事欠かないのがWeWorkです。WeWorkは世界各地でシェアオフィスやコワーキングスペースを展開しています。

WeWorkが登場する前から日本にはシェアオフィス・レンタルオフィスという業種はもちろん存在していました。

世界であればRegusやサーブコープ、国内企業であればビジネスエアポートやアセットデザインなど枚挙にいとまがありません。

その中でもWeWorkの広告宣伝効果がシェアオフィス業界全体に好影響をもたらしたと言っても過言ではないでしょう。

 

WeWorkが他のシェアオフィスと一線を画したのは「オープンイノベーション」に関する取り組みを前面に出したところが大きいです。

具体的には利用顧客同士のコミュニケーションがとれるという人材交流の場の提供です。

ほかにもテック系ベンチャー企業に投資・協業して新規事業を行っています。

 

「ここに行けば、こんな人に出会える可能性がある」
「ここに行けば、新しいビジネスが広がる可能性がある」

 

そう思える空間を作り出し、そこにIT等のビジネスを展開するためのインフラも整えます。

徹底して「ここに行けば情報がある」という空間を用意し、そのイメージを先行させたのです。

それによってより先鋭的な人材をその空間に集約させようとしました。

 

LIFULLのクラウドファンディング

 

クラウドファンディングは、オンラインプラットフォームを通して投資家を集め、資金調達する仕組みで、個人投資家でも少額投資が可能です。

2017年の法改正後から市場が急拡大しており、今後もさらなる成長が見込まれる投資手法になっています。

 

LIFULLは、2021年から「LIFULL不動産クラウドファンディング」という新しいサービスを開始しました。

複数のサービス会社が募集しているファンドを掲載しており、想定利回りや運用期間などを短時間で比較することができます。

 

【あわせて読みたい】不動産テックの注目企業を知りたい方はこちら!

 

 

シェアオフィスにおけるコロナ禍の影響

 

 

シェアオフィスはコロナ禍によって注目を集めています。シェアオフィス分野での動向を解説します。

 

VRは導入済み企業が多い

 

各シェアオフィス会社は既にインターネット上に「360°VR内覧」などと銘打って各拠点の動画を公開しているところは多くあります。

内覧希望の顧客と内覧担当者が動画で回線をつなぎ、各拠点、希望の部屋をリアルタイムに見せる内覧を導入している企業もあります。

このように一般不動産業者の内覧と同様のVRの活用等はすでに行われており、これからも多様化されていくでしょう。

 

コロナにより導入企業は増加

 

コロナ禍の影響の下でシェアオフィスを活用する企業も増えてきています。シェアオフィスを活用すると企業側としては社員の出退勤の管理が必要です。

そのため施設のセキュリティーカードなどに出退勤ログをとれるものを用意しているところもあります。

 

不動産テック業者の一角を担うakerunが展開しているのは簡易システムを契約者に個別に導入してもらう形でサービスです。

さらにオフィス契約を結ぶ際に対面でのやり取りがためらわれる企業が多くあります。その中で以前よりオンライン契約書を用意しているのがWeWorkやRegusなどのグローバル企業です。

これらの企業は世界中どこの国でも同じフォーマットのためどの国でも煩雑さがありません。

 

一方で印鑑を押すための契約書を要求する企業もあるという現状もあり、不動産文化においてITが活かし切れていないことが分かります。

 

不動産テック業界の今後の展望

 

 

元来、人と人、人と物などのマッチングはネット社会の得意分野の1つです。不動産テックにおいては人と家を結びつけるマッチング技術にも非常に強く働きかけるでしょう。

不動産は「不動」産というだけあって、本来「動かない」資産をやりとりします。

 

「こういう条件の家なら、予算このくらいで購入したい」

「この金額が希望だけど、この位の金額でも売れたらありがたい」

「自分の家をいつ頃、これぐらいの値段で売りたい」

 

こうした売り手・買い手の希望を不動産情報サイトなどで掲載し、マッチングを行うビジネスがアメリカでは始まっています。

これにより今まで表に出てこなかったさまざまなニーズに応えるようになりつつあります。今後、日本でもこのような人と家を結びつけるマッチングビジネスは広がっていくでしょう。

 

 

まとめ

 

 

ご覧いただいた通り、不動産業界そのものは、いったんピークを迎えている業界です。しかし不動産テック業界は技術をまだまだ活かし切れてはおらず今後も伸びしろは十分にあります

もし今後この業界への転職などを考えているのであれば、活況になるより早い段階で行動しだした方が良いでしょう。

 

不動産テックに興味があってもどの企業が自分に合っているのか分からない場合は転職エージェントの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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この記事の監修者

西内信

IT系ベンチャー企業にて法人営業を経験し、そこで培った経験を生かし総合人材会社へ転職。その後ギークリーを創業しました。今までにご相談に応じた転職者は3500名以上に上ります。転職者のご不安や疑問点など一緒に解決しながら、最適な未来が描けるようなサポートをさせて頂きます。

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