
【特別企画】ストリートファイター6プロデューサー松本脩平のキャリアと戦略
2026年1月22日にストリートファイター6 x Geekly(ギークリー)コラボの診断コンテンツ『JOB HUNT FIGHTER』がリリース。リリースを記念して、今回は株式会社カプコン『ストリートファイター6』プロデューサー 松本脩平様にゲームプロデューサーに就任するまでのキャリアや『ストリートファイター6』開発の裏側、戦略について語っていただきました。
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目次
■ 松本 脩平(まつもと しゅうへい)様
専門商社にて5年間営業としてキャリアを積み、2012年株式会社カプコンに中途入社。
人事部 開発人事サポート室で従事したのち、2016年にストリートファイター開発部門 プロデューサーに就任。『ストリートファイター6』、『カプコンファイティングコレクション』シリーズのメインプロデューサーを担当している。
株式会社カプコンに入社するまでのキャリア
―松本様がご担当されているゲームプロデューサーという仕事の役割と、最大のミッションについて教えてください。
松本様:まずゲーム制作にはプロデューサーとディレクターという役割があります。ディレクターはいわゆる監督ポジションで、プロデューサーは初期段階でディレクターとゲームのターゲットやコンセプトを決めます。
そこから制作されたゲームを「どれだけ多くの人に遊んでもらうようにするか」を考えることがプロデューサーの最大のミッションだと思っています。
そのために予算調達・調整をしたり、プロモーションやマーケティングプランを考え、海外支社ともコミュニケーションしながら実行しています。発売前の打ち出し方はもちろん、発売後も同じ熱量でミッションを達成するべく動いています。
―では、松本様がカプコンへ入社する前のキャリアについて教えてください。
松本様:大学生時代に参加した就職フェアで、ネジの専門商社ブースを訪問し、机に並んでいるネジに興味を持った事がきっかけでした。
その時の採用担当から「じゃあ、ちょっと面接来なよ」というお誘いがあり、その縁でネジ商社の営業担当として5年間働きました。
―意外な経歴ですね!専門商社からカプコンへの入社に至った経緯を教えてください。
松本様:営業活動の中で、メーカーの方と同行営業する事が年に数回ありました。その時にメーカーの方が自社の製品を説明する時の熱量に圧倒され、商社ではなく自社で製品をつくるメーカーで働きたいと思うようになりました。
ちょうど4年くらい働いていた頃で、キャリアとしても転職していいかなと思い、転職活動を始めました。
幅広い業界を見てみたいという思いがあり、ジャンル問わず、メーカー中心に転職活動をしたところ、カプコンとご縁があり2012年に入社することになりました。
―様々な企業を受けられた中で、カプコンへ入社された理由は何だったのでしょうか?
入社に至った理由は、やっぱり「会社が作ったものを、会社の看板で売りたかった」ということと「思い返すと遊んだゲームのほとんどがカプコンのゲームだった」 という点ですね。
年齢的にもストⅡ世代で、小学校の帰り道に駄菓子屋さんで初めて『ストⅡ』を遊んだのを覚えています。
『ストZERO』、『ストⅢ』シリーズ、『カプエス2』などは地元や学校の友達と遊んでいました。『ストⅣ』からはネットワーク対戦がきっかけで、オンライン上の友達がかなり増えましたし、今も交流があるので大切な”縁”をもらいました。
そういう経緯もあり、カプコンへの親近感が転職に至った理由のひとつです。
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株式会社カプコン入社からプロデューサーに就任するまで
―入社前からカプコンのゲームをプレイされていたとのことですが、実際に入社されてみて、入社後に感じたギャップなどはありましたか?
松本様:エンタメをメイン事業としている企業ですが、会社や組織としての体制はかなりしっかりしているな、と感じました。
ゲームの企画や制作と聞くと、想像力を活かしたアイデアをどんどん出していくイメージがあると思いますが、自分が好きだからだけではなく 、きちんとした根拠がないとアイデアを形にできません。なので、社内で仕事を進めるには具体的な根拠や理由が必要になります。
会社としてもひとつの業務を進めるにあたり、ステップやフローが確立されているところがあります。そこに最初はギャップを感じる人もいるかもしれませんが、方法を理解して進めていけば、どのポジションでもうまくやっていけると感じます。 逆に最初から根拠を明確に伝えられると、スピーディーに進みやすいです。
あと、年功序列でないところはいいギャップかと思います。
「なぜそう思ったのか」「なぜやろうと思ったのか」をちゃんと説明できて納得を得られれば、年齢、役職問わず重要な大きい案件を任せてもらえる場合もあります。
―カプコンに入社した当時はどのようなキャリアを描いていましたか?また、現在のキャリアを想像していましたか?
松本様: 入社当時は、その当時新設された開発人事サポート室という部署で採用されました。 最初はプロデューサーでも開発側でもなく、本社と開発の間を円滑に橋渡しするような部署で、営業経験を活かしたコミュニケーション力が評価されて入社に至りました。
ですので、当然ながらプロデューサーになるとは全く予想していなかったです(笑)。
ですが志望動機を遡ると、いつか営業の経験を活かしてゲームを売り出したいとは思っていました。 採用されたのは開発人事サポート室でしたが、僕のポリシーとしては「入社して自分がしたいことを伝えていたら、いつか叶うはず」と思っていたので、部署が違うから無理という考えは持っていませんでした。
何年か働いて、ゲームをPRをしたり、営業する立場になったらいいなというキャリアプランは考えていましたね。
―開発人材サポート室ではどのような業務をされていたのでしょうか?
松本様: 人事制度を開発社員にわかりやすく説明し、定着、運用することが主な仕事でした。
当時のカプコンは人事制度を改善しようとしたり、開発社員の能力を可視化するためのシステムを取り入れようとしていた時でした。その説明をするにあたり、できるだけ開発の方に分かりやすく説明し、システムや制度を理解してもらう必要がありました。
堅苦しい文章や言い回しで説明してもいまいち理解してもらえないので、分かりやすい資料を作成したり、意図や内容が伝わりやすい説明をしていました。
また、カプコンでは組織から各開発チームにメンバーをアサインするという体制になっているので、そのアサインシステムの管理や運用、全体リソースの管理なども行っていました。
―ストリートファイターシリーズのプロデューサーになるまでの経緯と最大の転機を教えてください。
松本様: 2012年にカプコンに中途入社して、2016年にプロデューサー職に就任しました。
開発人事サポート室で働いていた2015年くらいに、当時の上司が、ストリートファイターの開発部門から「ストリートファイターに携わりたい人を探している」と相談されていたようです。
ちょうど同じ頃、約3年働いていた僕は「開発側と事業側のどちらも経験していないと、開発人事部門でキャリアアップできないのでは…?」と思い始めていました。そこで「開発側で働いてみたい」と相談したところ、ストリートファイター開発部門への異動を打診していただきました。
どのポジションへの異動かは最初知らず、蓋を開けてみると”アシスタントプロデューサー”というポジションでした。「3年間アシスタントプロデューサーをして、4、5年目くらいから徐々にメインプロデューサーを目指して欲しい」というキャリアプランを提示いただきました。
ところが、当時メインだったプロデューサーの異動や退職があり、2年目でメインプロデューサーを任されることになりました。ですので、『ストV』のシーズン3の立ち上げからメインプロデューサーになって、今に至ります。
―2年目でメインプロデューサーとはすごいですね…!様々なチームがある中で、ストリートファイターチームから打診があった理由は何だったのでしょうか?
松本様: 僕はストリートファイターシリーズの「ベガ」というキャラクターが好きで、社員証にベガのステッカーを貼っていたのを見られていて、「シャドルー」と呼ばれていたそうです。そこから適性などの裏取りがされていたと聞きました(笑)
当時、管理部門から開発部門にジョブチェンジするのは異例のケースでした。上司はもちろん、更に上層部の方々も異動手続きに尽力いただいたと聞いています。本当に感謝です。
現在カプコンでは、年に1回、キャリアプランを上司と相談する機会があります。自分の経験を踏まえても、自分がやりたいことをどのような形でもアピールすることは重要だし、自分の希望や叶えたいことは絶対伝えた方がいいと思っています。
―開発人事からプロデューサーになられたことで、業務への向き合い方にどのような変化がありましたか?
松本様: 業務への向き合い方に関しては、営業時代から特に変化はないですね。
仕事は1人ではできないので、分からない時は聞く。そしていろいろな人を巻き込んで、いろいろなアイデアを聞くというスタンスは変わらないです。人と人との繋がりを重要視して仕事してるって感じです。
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『ストリートファイター6』開発チームについて
―シリーズを通して幅広いファンがいるストリートファイターですが、ゲーム開発に携わる中で大切にされている点やポリシーなどはありますか?
松本様: 特にプロデューサーやマーケターは、 「ユーザーにどういう気持ちになってもらいたいか」を考えるのが大事だと思っています。格闘ゲームって遊ぶまでのハードルが高くて、 難しそうと思っている方も多くいます。
なので、プレイして「格闘ゲームって面白い」「ストリートファイターって面白い」と思ってもらえるように、どのようにして接点を作るか?どのように楽しそうと思ってもらうか?どのようにプレイしてみようと思ってもらうかを考えるのが大切ですね。
また、eスポーツ大会やイベントも盛んで、それを観戦する人も増えてきている中で、見るのは好きだけどまだプレイしていないという人もいっぱいいると思います。 そういった人達にもやってみようと思ってもらうために、どういう道筋を作っていくのかは今も考えています。
―ストリートファイターシリーズの開発チームではどのような方が活躍されていますか?
松本様:比較的若い人が多いです。コミュニケーションはだいぶ活発だし、全体的に楽しく仕事をしている空気感があります。
ゲームの仕様のことを話すのももちろんですけど、大会の結果を話したりとか、それこそゲーム以外のこととかも話したりしているので、すごく活発に言いたいことを言える環境ですね。
そのような中で、自分たちがやろうとしてることや、やりたいことを発信できる人が活躍しているかと思います。
―チームでのコミュニケーションにおいて意識していることはありますか?
松本様:良い事も悪い事も、どんな内容でも会話することですね。
コミュニケーションの手段としては、社内のツールを使ったりもしているのですが、直接席に行って話すことが多いです。
フラッシュアイデアでも突飛なアイデアでもしっかりと聞くようにしています。色々検証した結果、ダメになるパターンはあると思うんですけど、十人十色なアイデアを言いやすい空気感を醸成する事を意識しています。
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『ストリートファイター6』開発の裏側
―『ストリートファイター6』のプロデューサーとして一番苦労された点をお聞かせください。
松本様:性格上、苦労したと思ったことはあまり無いのですが…。多種多様なお客様のパターンを想定し、大枠のマーケティング方針を考えて、それをプロモーションなどに落とし込むのが大変だったかもしれません。
ストリートファイターを知ってる人もいれば、全く知らない人もいるし、性別や年齢、国籍や文化の違いがあるじゃないですか。かなりのパターン数があるから、このパターンの人にはどうPRしよう、とか考えるのに時間がかかりましたけどめちゃくちゃ面白かったです。
―属性によってPR方法は変わりそうですね。その中で、この視点は面白いなと感じたり、成功事例などはありましたか?
松本様: まず過去作と比べても、『ストリートファイター6』は日本とアジアで人気です。 そして年齢層のボリュームゾーンが20代と若い。今までは30代中盤から40代が多かったのですが、かなり若返っています。
当時の戦略として、”ストリーマーやVTuber、YouTuberなどデジタル媒体で影響力のある方にどうしたらプレイしてもらえるか”ということを、前作『ストリートファイターV』の運営時から考えて社内に発信していました。それが良い形で社内認識され、広まったことが一番大きいです。
カプコン自体も若年層へのアプローチがあまりできていなかったので、ほぼ初めての取り組みでした。
―『ストリートファイター6』を新しいプレイヤーに「面白い」と思ってもらうために、どのような工夫をされたのでしょうか?
松本様:そもそも「なぜプレイしないのか?」を色々な人に聞いたりして、かなり調べました。
ストリートファイターは知ってはいるけどプレイしていない人に「なぜプレイしないのか?」を聞く。漠然と難しそうという人には「難しくない」と思っていただく。それらを意識してプロモーションや見せ方、伝え方を考えました。
昔やってみたけど難しかったという人には、どの様な操作にすればハードルが下がるのかを考えました。
ボタンの押し方とかも、男性・女性・子どもだとどういう風にボタン押しているのか、違いがあるのか、なども調査しました。
実際に見ると、「ボタン連打をしがちだな」とか「違うボタンの使い分けが難しいんだな」などが分かってきます。
これらを『ストリートファイターV』の運営時に実際にゲームプレイされている現場やゲームショウなどのイベントに行って、見たり聞いたりを相当しましたね。
―初めてプレイすることにハードルを感じてしまう人のリアルな意見を、現場目線で調べられたんですね。
松本様: そうですね。特に『ストリートファイター6』のモダン操作に関しては、決して初心者向けではなく、「ストリートファイターの対戦の楽しさを知る特急券」という意識を持って、プロモーションするように心がけています。
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思い描く今後のキャリアとカプコンが求める人物
―松本様の視点で、今後ゲーム業界はどのように変化していく、どのように変化していってほしいと思われますか?
松本様:ぶっちゃけ、あまり思いつかないのと、今後のゲーム業界の変化とかは考えた事ないですね(笑)
ただ、「面白いかどうか」だけかなと思っています。もちろん遊び方やハードウェアの変化はあるかと思いますけど、結局は「面白いかどうか」かなと。
―ゲーム業界ではどのようなスキルや経験が活きると思いますか?
松本様: ゲーム業界に限らずですが、やっぱり人とコミュニケーションを取るスキルは重要ですね。仕事は1人で完結することはないので。
相手の気持ちをちゃんと汲み取って、かつ自分の思いもちゃんと相手に伝えられた結果、チームとして向くべき方向に向くというようなコミュニケーションの取り方が大事だなと思います。コミュニケーションを取るうえでの共感力や最後まで相手の話を聞く力は、営業時代のスキルが活きていると思います。
関係している企業様とも案件を進める時も、「他でもこういう悩みがあるんですよ」とか「他のゲームでもこういう課題があるんですよ」と話すと、より悩みを打ち明けやすい空気が作られるので、 そのような共感はできるだけ伝えるようにしていますね。
―今後松本様が描くキャリアと、叶えたいことについてお聞かせください。
松本様:叶えたいことは、ストリートファイターを始めとした格闘ゲームというジャンルを、遊んで楽しい!見て楽しい!と思ってくれる方をもっともっと増やしていきたいです。
格闘ゲームってゲームジャンルで言うと、アクションゲームやシューティングゲームに比べて大きくはないです。 『ストリートファイター6』をプレイしていない人は世界中にまだまだいっぱいいます。一時期は世界中で流行っていた時代があるからこそ、マーケティング戦略を考えて、格闘ゲームを広げていきたいと考えています。
個人的なキャリアとしては、プロデュース業に加えて、モノを広めるということをもっと極めていきたいですね。
世の中には「実は面白い」「実は楽しい」「実は美味しい」など、「実は・・・」なモノゴトがたくさんあると思うんです。ゲーム業界に限らず、そういったモノゴトを意識的に見つけて自分ならどのように広めていくか?という意識を鍛えて今後のキャリアに活かしたいですね。
―最後に、カプコン様への転職を考えている人へのメッセージをお願いいたします。
松本様: カプコンは「こういうことしたい」とか「こういう世界にしてみたい」という意見をちゃんと聞いて、実現できるように一緒に考えてくれる仲間がたくさんいる会社です。
やりたいことをちゃんとアピールし続ける熱い気持ちを持っている人、持ち続けられる人と働きたいと思います。
やりたいことがすぐにできるわけではないかもしれないけど、1年でも3年でも5年でも想ってたらできるようになるので、折れるなよ、諦めるなよ、という感じです。
あと、自分から発信する力がある人は向いていると思いますね。「この人はこれが好きで、こういうことやりたいんだ」という想いが分かり合えるのがいいなと思います。
―本日はインタビューをお受けいただきありがとうございました!
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